育ていく悠久の歴史「和漆器」

使い込むほどに味わいを増し、風合いが古格を生む

 日本の和家具の魅力は、何と言っても木の表情が豊かにそしてダイレクトに伝わるその風姿の良さがまず挙げられます。
 
 木という天然の素材の表情がそのままのかたちでぎゅっと濃縮され、それが直線の構成で形になっている。天然素材は光の当たり具合で様々に表情を変えるだけでなく、使い込んでいくうちに更に味わいを増して、その風合いは時間をへることで深まっていきます。
 

深まり行く風合いと時代のかおり

 

「自然」が家の中にある・・・

 現代の家具は構成も効率的で無駄がなく、同時にほとんどが使い捨てにするために作られています。買って、やがて飽きれば捨てる。そして次を買い換える。それが現代のライフスタイルとなっています。しかし、昭和30年くらいより前の昔の家具はそうではありません。世代を超えて使い続けられるように作られた家財なのです。
 
 その家をより豊かにし資産を増やす為の「貯金」のような感覚で作られたのが昔の家具です。特に明治時代の和家具には資産価値をもとめて、贅沢な素材と正確な技術、丁寧な仕事で構成されているものがほとんどです。捨てないからこそ、子孫が使い続けるからこそ、素材を吟味して当時でも高価であった良い木目を探しケヤキやナラ、そしてタモやトチなどの無垢材の厚板を使いました。
 
 ですから、今ではとても手に入らない様な贅沢な部位を惜しげも無く使い、堅牢に頑強に作られているのが、幕末から大正にかけての特に上手の和家具の特徴です。
 
 そして、木を選んで作ったからこそ木の風合いを前面に押し出し、木目の良さを際立たせる効率の良いデザインで日本の昔の家具は作られていました。天然素材のソリッドな魅力が日々移ろい行く様々な表情を見せるという魅力は、家の中に「自然」のリズムを招きいれる効果を日々の生活にもたらしてくれます。
 

構造の強化と交換すべき部位を押さえた的確な材質選択

 

 さらに「100ねん・・・」と言う思い。

 Pro Antiques "COM"では和家具類を分解洗浄・木工構成・古色塗装という形で、つぎの100年の使用に耐えるリノベートレストア技術をていねいに落とし込んでいます。現代生活に今の家具を使う感覚で安心して使える感覚と、本物の日本のアンティーク家具がもっている魅惑と味わいという、両立しがたい二つの概念を合わせることで愛着を持ちライフパートナーとして使い続けられる「ほんもの」の良さを伝えることに努力をおしみません。
 
 これまでの100年間の汚損を丁寧に分解して洗い落とし、修復という復元の思いと現代生活に合致する様な構造強化を行う丁寧な木工作業をへて、「塗る」のではなく100年間の経年変化を二週間程度の表面処理で実現し、飴色の光沢を放つアンティーク家具ほんらいの味わいを再構成しています。
 
 昔の日本家具の魅力を最大限引き出し、清潔に安心して使い込んでいくことができる。それが本来の昔の和家具の取り入れ方だと考えています。
 

新たに作る以上の手間をかけ、素材に妥協しない

 

今だからできることとできないこと・・・。

 かつては丁寧に現役で使われ続けた状態の和家具が市場に出回る時代がありました。しかし、残念ながら今はそういう時代ではありません。昔のものを「敢えて」大切に使われているか、廃棄物の様に家の隅に押し込んだまま放置されているかの極端な二つの傾向に分かれてしまったのです。
 
 前者の場合、それは家具たちにとって幸せですが、大切にされているからこそ市場に出ることはほぼ無くなりました。結局、後者が市場に出ることになりますが、現役を離れ破損や汚損が進み、漆がはがれ木肌がつやを失った状態では次の100年を乗り越える余地はありません。
 
 そして、それらのほとんどが充分なクリーニングさえされないまま、着色剤やオイルを塗られ「店頭に並ぶ瞬間」だけよく見える様な厚化粧をされて安値で流通することになってしまっています。そして、流行という感覚で購入されやがて飽きたら捨てられてしまう。
 
 ただ、木工修理や本格的な再塗装には時間や金銭的なコストがかかります。何より技術が必要です。そしてそれらのコストを昔の家具に反映した価格をつけても、「そのまま」の価格と単純に比較されてしまうというのが残念なことに現実なのです。
 
 特に見えないところにどれだけ惜しみなく時間と技術を投入しても、なかなか理解してもらうことが難しいことを私たちは知っています。
 
 それでも、使われなくなった本当に良い昔の家具が一つでも後世に伝わる様にわたしたちは常に工夫と時間をかけています。本当に満足して喜んでもらえるためには何をすればよいのか・・・「手」を休めている時間的な余地はほとんどありません。
 

天然素材の吟味された贅沢な木目取りが昔の和家具の魅力の一つです

 

つたえていく、そして伝える。

 Pro Antiques "COM"では独特の独自の手法で昔の日本の和家具と向き合っています。それはもしかすると少しわかりにくいことかもしれません。Pro Antiques "COM"の工房が持っている古色修復の技術はその技術を惜しみなく注げば注ぐほど、自然に溶け込み、手を入れれば入れるほど、手を入れことが「わからなく」なります。
 
 それでも後世に伝えることができるように工房は修復を続けています。言葉にできない「何か」を伝えることができたのではないか・・・そんなふうに思うのです。
 
 障子の外から緑を吹き抜けたそよ風がはいりこみ、淡い光が古い簞笥の表面を照らす。四季を感じ、四季の中で生活を静かに続ける。
 
 かつて日本であたり前に行われていた古い豊かな時間を少しでも伝えることが出来れば、そんな素晴らしいことはありません。その時間の記憶を伝える切符が、Pro Antiques "COM"にはあります。
 
Pro Antiques "COM"